2020年3月13日 日本共産党・火爪弘子
(1)新型コロナウイルス感染対策について
安倍首相による「全国一律休校」の要請は、政府専門家会議での議論もないまま「科学的根拠」なく、突然行われました。すぐ翌日には、萩生田文部科学大臣は「設置者が学校を開くと判断すれば尊重する」と表明、「一律休校」方針は事実上撤回されました。文部科学省関係者からは「学校の保健室には養護教諭が配置され、緊急の際にはすぐ校医につながる。教員は生徒の様子を随時見ることができるし、学校給食で児童の栄養が確保されている」「むしろ学校は子供たちの安全装置だ」との指摘が上がりました。
こうした判断にたち、島根県は「感染例が判明した場合は休校する」として県立学校の臨時休校を行わず、3月4日時点で全国404校の公立学校が授業を継続しています。
さらに、佐賀県が来週からの授業再開を決め、県内でも、富山市、黒部市、舟橋村などが来週からの授業再開を決めています。黒部市は給食実施も決めたとのことで、保護者からは大歓迎を受けています。また、県内では私立高校のなかにも授業を再開する動きが広がっています。県教育委員会が、こうした市町村の判断による授業の再開と、学校給食の再開を積極的に支援するとともに、特別支援学校など県立学校の授業やスクールバスの再開も検討すべきではないかと思います。教育長にうかがいます。
厚生労働省が9日、新型コロナウイルス感染症の発生がピークを迎えた時の患者数推計を公表し、各県に医療提供体制の拡充を要請したと伝えられています。共同通信の都道府県別推計によると、富山県の流行ピーク時の1日あたりの外来患者は3700人、入院患者は2100人、重症患者は70人とのことです。その根拠について、県はどう理解しているのでしょうか。県内で確保されている病床は、これまでに80床と聞いてきました。国が地域医療構想でベッドを減らせと圧力をかける一方で、科学的根拠も満足に示さず、突然こうした要請を行うことはいかがかと思います。どう対応するのか厚生部長にうかがいます。
依然としてマスク、消毒液の不足が深刻です。特に、医療機関、介護事業所、放課後児童クラブなどについては、県が在庫状況を調査し、責任をもって支給するなど対応すべきだと思います。安倍首相は5日に、医療機関向けには優先的にマスク1500万枚届けると表明していますが、県内には回ってくるのでしょうか。マスク不足への対応について、厚生部長にうかがいます。
(2)「とやま未来創生戦略」と地域循環型経済について
県の次期「未来創生戦略」などを見ると、地域循環型経済とか、小規模事業者支援とかの視点が、希薄なように感じます。
例えば、総務省の就業構造基本調査によれば、2017年まで10年間に、県内の自営業主は実に32%減少しています。減少率で全国一です。内訳を見ると、製造業で46%減、農林業で44%減、卸・小売業で37%減となっています。これは抽出調査なので、全数調査の経済センサスも見てみました。こちらは、2012年からのデータしかないので比較できませんが、それでも最近5年間の減少率で、農林水産業を除き全国7番目の減少率です。地方創生、地域活性化にとって、自営業者とか家族経営は極めて重要な存在だと思います。この数字を、知事がどう認識されているか伺います。(知事)
「地域創生」のために、地域循環型経済の視点が大事ではないかと、質問でも幾度か提案してきました。全国的には、こうした取り組みで、人口減少に歯止めをかけている事例も生まれ始めています。
昨年の県土整備観光委員会で、観光産業における「地元調達率」「地域調達率」について、取り上げました。2015年7月に観光庁が、観光地域経済調査の結果を公表しています。全国の観光地5,861か所のうち、約900か所を選定し調査したものですが、観光事業所のうち材料やサービスをその市区町村内で調達している割合は全体で19.4%。都道府県内による調達は全国平均で37%というものです。
地域別にみると、富山市の市内調達率は26%、金沢市は47.2%でしたが、高山市は73%と群を抜いていました。調べてみると、高山市の産業ビジョンには「地域循環」という言葉が何度も出てきました。観光に必要なもの地元で生産し、利益とやる気を地域に循環させ、活力も高める取り組みに挑戦し、広げるべきではないか、観光交通振興局長の見解をうかがいます。
学校給食の地産地消も、食育の効果のみならず、生産者の意欲向上と地域活性化につなげることが重要だと思います。一昨年の質問で、滑川市の取り組みを紹介しました。市の農林水産公社に専門職員を配置し、給食センターの栄養職員さんとの連携で、今年度は昨年末で市内産の野菜・果物の使用量が過去最高の65.8%になったといいます。お話をうかがって特に印象深かったのは、学校給食に使うものはできるだけ地元で生産しようという意欲が、小規模農家を含めた協力農家に広がってきたということです。改めて、この経験に学ぶ必要があると思います。県内の学校給食における県産食材の活用は4年連続で減少し、2018年度は全県で461トンにとどまりました。来年度の目標700トンの実現をあきらめずに、頑張って欲しいのですが、新年度の予算はわずか360万円です。専門職員の配置や、食材調達ブロックの分割、県外産食材との価格差補填など、積極的に取り組むことを要望し、農林水産部長にうかがいます。
外国産豚肉の輸入拡大やCSF(豚熱)の影響で、県内養豚農家は大打撃をうけてきました。昨年夏以降、県内では3軒が廃業、来年2軒が廃業するとの話もあって「県内の養豚場は6か所になるかもしれない」「わしらは絶滅危惧種」だと養豚農家の方は言っておられました。県内需要に対する県産豚の供給量は約4割にまで下がっていると聞きました。TPPや日欧EPA、日米貿易協定による打撃も心配であり、県の支援を要望するものです。業者からは、CSFワクチン接種の1頭あたりの手数料が、石川や福井県より高いのはなぜかとの質問が寄せられています。また、学校給食への使用拡大のために、県外産との価格差を県が補填するなどして、激励してはどうかと思います。農林水産部長の見解をうかがいます。
県の地元中小企業への発注率が少ないことを、以前指摘したことがあります。官公需法は、その第3条と第7条で、県にも中小企業の受注機会の確保を求めています。県は中小企業振興条例も制定し、小規模事業所支援をより位置づけた改正も行ってきました。しかし、今回いただいた資料によれば、昨年度の県の中小企業への発注率は、工事では88%ですが、物件調達は46%、役務では38.4%、あわせて66.5%にとどまっている。この分母のなかには、そもそも中小企業にできない仕事は含まれていません。きわめて少ないのではないでしょうか。福井県は90.4%、石川県は86.4%です。富山県も目標を設定して、改善すべきではないでしょうか。商工労働部長にうかがいます。
(3)ジェンダー平等社会の実現のために
3月8日は、国連も呼び掛けた国際女性デーでした。今年は、ジェンダー平等を行動綱領として採択した第4回世界女性会議(北京会議)から、25年になります。ジェンダー平等とは、男性も女性も多様な性を持つ人も、その人権が保障され、平等に能力を存分発揮できるようにすることです。「持続可能な開発目標」SDGsも、2030年までに達成すべき17の目標の5番目に、ジェンダー平等の実現を掲げるとともに、17の目標のすべてに「ジェンダーの視点」を据えることを強調しています。
ところが、経済団体である世界経済フォーラムが年末に公表する「ジェンダー平等指数」によると、2019年の日本の総合順位は153か国中121位で、しかも日本は年々その順位を下げてきました。その根底には、大企業・経済界が表向きは「男女平等」をいいながら、いまだ女性を男性労働の補完者のように使う、利益最優先の現実があります。また、政治的にも、日本国憲法以前の古い家族観、男尊女卑を是とする復古主義が根強く残っていることも軽視できません。まず、日本のジェンダー平等指数の遅れの要因について、知事の認識をうかがいます。
男女の賃金格差の是正は大きな課題です。毎月勤労統計調査によれば、県内の従業員5人以上の事業所における2017年の平均賃金は、女性は男性の59.2%にすぎません。女性の正規雇用化が大事ですが、総務省の賃金構造基本統計調査でフルタイムだけを比較しても、2019年で71.8%と大きな開きがあります。
OECD経済調査2019によれば、男女の賃金差は加盟国平均86.2で、日本は34か国中32番目です。フルタイムの賃金格差には、男女の昇給差別や昇格差別も反映しています。「同一価値労働同一賃金」などの立場で、この賃金格差をもっと数値化して示し、解消を働きかけるべきと思います。知総合政策局長の見解をうかがいます。
昨日、名古屋高裁で、娘に性的暴行を繰り返していた愛知県内の父親に対して、逆転有罪の判決が下されたことを喜びたいと思います。この間、世界的に広がった#MeTooの声や、フラワーデモの取り組みなど、女性たちの勇気ある行動が社会を動かしてきました。
職場におけるセクハラ・パワハラ被害根絶も切実です。多くが泣き寝入りを余儀なくされ、やむなく退職という事例も少なくない。労働局へのセクハラ相談件数は、全国的には2018年度で年間7,639件。県内でも、昨年労働局に寄せられたハラスメントにかかわる相談は1029件、うちセクハラ・マタハラ関係が251件と年々増加しています。それでも、相談件数している人は少ないのではないでしょうか。今年6月からは、対策強化を盛り込んだ関係法令が順次施行されることにもなっていますが、罰則規定が残念ながら持ち込まれなかったため、実効性には大いに疑問があります。県のこの取り組みはあまり見えませんが、今後どう取り組んでいくか総合政策局長にうかがいます。
選択的夫婦別姓の法制化への、気運が高まりつつあります。県庁では、職員の旧姓使用が認められています。知事部局は2002年から、県教育委員会は2014年から、要綱で希望する職員に旧姓使用を認めてきました。結婚を機に苗字が変わることで、それまでの自らのキャリアが途切れ、実績が失われるように考え、旧姓使用を望む男性、女性たちが増えています。しかし、県の本庁以外では、この要綱の存在があまり知らされておらず、申請期限を超えてから救済を求める要望も寄せられています。県や教育委員会からは、柔軟な対応をしたいとの回答をいただいていますが、改めてこの制度の周知と柔軟な対応を要望しておきます。県庁職員における旧姓使用の意図と、実績、今後の対応について経営管理部長にうかがいます。
旧姓使用が可能になっても、法律化されていないため、実生活では非常な不便を強いられています。銀行口座も保険証も、パスポートも旧姓は使えません。こうしたことから、選択的夫婦別姓の法制化を求める動きが高まっている。一昨年2月公表の内閣府世論調査では、選択的夫婦別姓に「賛成」が42.5%と、「反対」の29.3%を大きく上回りました。30~39歳では「賛成」が52.5%と過半数です。この間、選択的夫婦別姓を求める訴訟が2次にわたって取り組まれましたが、その原告の一人であった富山市の塚本協子さんは、私の大学の先輩として交流もありましたが、「自分の名前で最後まで生き、自分の名前で死にたい」と繰り返し語っておられました。残念ながら、その言葉を残して昨年84歳で亡くなられましたが、その遺志を継いで一日も早く法制化を実現したいと思っています。選択的夫婦別姓制度の法制化の運動について、知事の見解をうかがいます。(知事)
最後に、学校教育におけるジェンダー平等の課題についてです。
県内の小学校と特別支援学校では、ほぼ100%で男女混合名簿が採用されていますが、中学校や高校ではまだ半分ほどの学校で男女に分けた名簿になっているようです。男女別名簿の場合、習慣として男子が先で、何事も「男子優先、女子は後回し」というジェンダー刷り込みにつながるとの指摘があります。
また、制服のある学校で、女子生徒にズボンの着用を認めていない学校もあります。県内のある高校で実施された生徒アンケートによれば、「常にズボンを着用したい」と答えた女子生徒が15人いたとのことでした。決めるのは各学校ではありますが、男女混合名簿の採用や、ズボン着用の容認など、性的マイノリティーの子どもにとっても苦痛の軽減が期待されと思います。学校におけるジェンダー平等について、どう取り組んでいくか教育長にうかがいます。